成年後見のこと

成年後見人・保佐人・補助人として、司法書士は家庭裁判所から一番多く選任されています。

成年後見制度は、認知症を発症した高齢者や知的障がい者、精神障がい者等を対象に、判断能力が不十分な方の権利擁護、財産保護等を目的として設計されている制度です。判断能力の程度により、成年後見人・保佐人・補助人が家庭裁判所から選任され、ご本人の生活面及び財産管理面の支援をいたします。

成年後見人・保佐人・補助人は、現在6割以上が、本人の親族ではない、第三者の専門職が選任されています。それは、法律知識、福祉知識に加え、高度な倫理の保持が求められているからです。その専門職の中でも、司法書士は全国で最も多く選ばれています。理由としては、司法書士団体の内部での研修、事件の管理報告・指導体制が整備され、社会から一定の評価を得ているからであると考えています。

事例紹介(こんな場合はぜひご相談ください)

高齢者が、布団や健康食品などを次々購入させられている!

秋子さんは、御年90才ですが、足腰はとても元気で、毎日畑作業に精を出しています。でも、ある日娘の美香さんが秋子さんを訪ねると、仏間に真新しい布団が三組も!横に落ちていた領収書には金100万円の文字が!にこにこしている秋子さんを前に、美香さんは途方にくれてしまいました。

判断能力の低下した高齢者をねらいうちする悪徳商法、オレオレ詐欺は後を絶ちません。クーリングオフや消費者契約法を用いて、問題を解決する方法もありますが、期間が過ぎてしまったりすると難しい場合もあります。秋子さんは、軽い認知症と診断されました。美香さんは、補助人に選任され、高額な商品の契約については美香さんの同意がないと成立しないことになりました。

障がいのある息子の将来が心配!

頼子さんの息子の正夫さんはとても優しい子で、親思いのいい子です。知的な障がいがありますが、自分の身の回りのことは出来るし、頼子さんのお手伝いもしてくれます。でも頼子さんは今年80才を迎えます。正夫さんは58才です。正夫さんは以前悪い友達に騙されてこっそりお金を渡していたことがありました。今は二人で暮らしているから不自由はないのですが、将来自分が病気になって、正夫さんを施設に預けなければいけないこともあるだろし、正夫さんのために貯めておいたお金の管理も心配です。カレンダーを眺めながら、頼子さんはそっとため息をもらしました。

障がいのある子どもを長い間見守ってきた親御さんも高齢になります。自分が亡くなった後、残される子どもの心配は切実です。親が健在なうちに、子どものために成年後見制度を利用して、財産管理や将来の生活の設計について備えることも必要です。正夫さんには、司法書士が保佐人として選任されました。司法書士は、正夫さんのことはもちろん、頼子さんの相談相手にもなり、これからおこる心配ごとについて、任意後見制度の利用を含めひとつひとつ一緒に考えていくことにしました。

施設に入っているお年寄りの財産が心配!

介護職の山本さんは、施設に入所している田中さんのことが心配になり、施設長に相談をもちかけました。「田中さんの息子という男性が頻繁にお見舞いにきてくれて、それは有難いのですが、そのたびに田中さんはお金を渡しているようなのです。この前は通帳と印鑑を渡しているところを見てしまいました。でも、入所記録を見ると子どもはいないことになっているのです。心配です。」

身内の方が、本人の財産管理をすることはよくあると思います。適切に本人のために管理してくれればいいのですが、勝手に自分のために消費しているケースもあります。田中さんには、市長の申立てにより、司法書士が成年後見人として選任されました。司法書士が通帳の記録を見たところ、数十万円単位でお金が下されていることが分かりました。司法書士は、息子と名乗っていた人物(実は自宅の隣の人でした)に対し、お金の返還を求めていくことにしました。