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2016.09.22 トピックス

空家問題~司法書士がお役に立てること~

近年の少子超高齢社会の急速な進展、人口減少、産業の空洞化等の要因により、居住その他の使用がなされなくなっている住宅等が年々増加してきています。 「平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局、平成26年7月29日公表)によると全国の総住宅数6063万戸のうち、空き家は820万戸、総住宅数に占める割合は13.5%に達し、20年前に比べ大幅に増加を続けており、今後も増加することが懸念されています。

このように適切な管理がされていない空き家が年々増加していく結果、安全性の低下や公衆衛生の悪化、景観の阻害等の多岐にわたった問題が生じ、地域の生活環境に対しても深刻な影響を及ぼすものとなってしまいます。

自治体の中には既に条例等を制定して、この空家問題についての対策を講じているところもありますが、それらの取り組みだけでは問題の解消に限界もあり、平成26年11月27日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が公布され、平成27年2月26日に一部施行、同年5月26日に全面施行がされました。
この法律では、空家等の所有者が自らの責任によって対応することを求めているとともに、自治体が取り組むべき施策について定めています。そこで、この問題に関し、自治体の方、個人の方、それぞれに対して、司法書士がお役に立てることをご紹介させていただきます。

自治体のみなさまへ

空家等対策の推進に関する特別措置法の施行を受けて

空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)の施行を受け、各市町村においては、現在、協議会の設置、空家等対策計画の策定をはじめとする様々な施策への取り組みをはじめられていることと思います。司法書士は相続登記など不動産に関する登記の専門家である他、成年後見業務、相続財産管理人業務へ携わる法律専門家として、市町村が取り組む施策に様々な面での協力が可能です。

市区町村が行うべき施策 司法書士がお手伝いできること
1.空家等の実態把握
空家等の所有者(相続人)を調査し、データベースを整備することとされています。
(9条11項、11条)
相続登記を行う専門家であり、相続人特定のための戸籍調査を迅速かつ正確に行うことができます。成年後見制度や相続財産管理・不在者財産管理制度の利用が必要となった場合は、その手続きを行うことができます。また、専門職後見人としての就任実績は専門職トップであり、成年後見人・財産管理人等に就任して業務を行うことができます。
2.実施体制の整備
以下の体制を整備することとされています。
・協議会の設置(7条)
・国の基本指針に則した空家等対策計画の策定(6条)
・空家等所有者に対する情報の提供、助言、援助等相談体制の整備(12条)
地域に密着して日々の業務を行い、地域の実情を把握している専門家であり、協議会への参加等を通じて市町村と連携していくことができます。住民の皆様や市町村ご担当者からのご相談に応じる体制も整えています。
※空家等対策実施のための基本方針(総務省・国土交通省告示第1号)(抄)2.実施体制の整備
(2)協議会の組織
協議会の構成員として、具体的には弁護士、司法書士、・・・、土地家屋調査士、・・・法務局職員・・・が考えられる。
(3)空家等の所有者等、周辺住民からの相談体制の整備
体制整備にあたっては、空家等をめぐる一般的な相談はまず市町村で対応した上で、専門的な相談については宅地建物取引業者や関係資格者等の専門家の団体を連携して対応するものとすることも考えられる。
3.空家等の利活用
空家等及びその跡地の利活用のために必要な対策を講ずることとされています。(13条)
空家等の利活用、跡地利用等に関する売買・賃貸借管理等の各種契約のチェックやアドバイスを行うことができます。確定した所有者を公示するための相続登記を行うことができます。

「空家」を問題にしないためにできること~「未来につなぐ相続登記」の取り組み~

現在顕在化している空家に関する問題の多くは、不動産の適切な管理がなされていないことによるものですが、その中には相続登記等の手続きがなされず、長年にわたり放置されてしまっているために、市町村担当者による不動産の所有者調査が困難となっているものが多くみられます。相続登記等の手続きが適切になされることは、将来の「空家化」を予防することにもつながることになります。

愛知県司法書士会では、相続に関する相談窓口の充実を行うとともに、名古屋法務局及び愛知県土地家屋調査士会と連携して、「未来につなぐ相続登記」と題し、相続登記の促進に向けた取り組みを実施しています。空家問題解決のための一つの方策として、このような取り組みもご活用ください。

以上のように、司法書士は専門性を活かしながら、市町村の皆様と連携をしていきたいと考えております。空家等対策を検討される際には、ぜひ司法書士をご活用ください。まずは愛知県司法書士会にお問い合わせください。

連絡先 愛知県司法書士会 TEL 052-683-6683

個人のみなさまへ

このような場合は司法書士にご相談ください。

空き家の相続について

Q 空き家が亡くなった両親の名義のままになっているのですが、相続はどのようにすればいいですか?

A 空き家の登記名義人が亡くなり、相続人が複数いる場合には、相続人全員の話し合いでその空き家を誰が相続するかを協議することで、特定の相続人へ名義変更をすることができます。この相続登記については、いつまでにしなければならないということは特段の決まりはありませんが、長期間にわたって相続登記がされないことによって、手続きが複雑になることもありますので、早めに相続登記を行う方がよいでしょう。相続登記について不明な点がありましたら、司法書士にご相談ください。

Q 相続放棄をしたいのですが、どのようにすればいいですか?相続放棄をすれば、空き家の管理はしなくてもいいですか?

A 相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、相続放棄の申述書を提出して行います。ただし、空き家の管理を引き継ぐまでは、自己の財産の管理と同じ注意義務をもって空き家を適正に管理する責任はありますので、相続放棄をしたからといって、空き家の管理をしなくてもよいことにはならないので注意が必要です。相続放棄申述等の家庭裁判所に提出する書類等の作成については、司法書士がお手伝いすることができますので、お気軽にご相談ください。

空き家の管理・処分について

Q 認知症の父が空き家を所有していますが、これからの管理や売却をするにはどのようにすればいいですか?

A 成年後見制度を利用することができます。ご本人の他、配偶者や4親等内の親族等によって家庭裁判所に対して成年後見の申立をすることになります。成年後見の申立書の作成等も司法書士がお手伝いすることができますし、司法書士が成年後見人となることも可能です。

Q 空き家を管理する人がいないような場合にはどうなるのですか?

A 空き家の所有者等の行方が不明となった場合には、不在者財産管理人を家庭裁判所で選任してもらい、不在者財産管理人によって空き家を管理してもらうことになります。また、相続人全員が相続放棄をする等して、空き家の相続人が不存在となった場合も家庭裁判所で選任される相続財産管理人によって空き家を管理してもらうことになります。これらの申立は利害関係がある者からもすることができますが、裁判所に提出する書類の作成は司法書士がお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。

Q 空き家を放置すると土地の固定資産税等が高くなるのですか?

A 空家等対策の推進に関する特別措置法等では、一定の空き家の敷地においては、固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から外す措置を講ずる旨が規定されているため、このような土地の税金が高くなるという話がありますが、これは、法に基づく必要な措置の勧告の対象となった特定空家等に係る土地に対する措置になりますので、空き家となったからといって、直ちに敷地の固定資産税等の負担が増加するものではありません。