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2020.03.30 トピックス

民法(債権法)改正について

特集記事・民法(債権法)改正について。2020年4月1日から債権法に関するルールが変わりました。

Questionどんな改正か簡単に教えて?

私たちの生活に身近な法律である民法ですが、その規定は生活の様々な分野に及んでいます。昨年行われた「相続法」と呼ばれる部分の改正に続いて、令和2年4月1日からは「債権法」と呼ばれている部分を中心として規定が改正されます。
「債権法」と呼ばれる部分には取引社会を支える契約の効果に関する規定などがおかれており、それらを中心に行われる今回の改正は、明治29年(1896年)から約100年間以上にわたりほとんど変更がなかった規定について、当時より複雑化・高度化した現代の社会・経済への対応を図るとともに、裁判例や法律解釈など実務で通用している部分を明文化し、分かりやすくするためのものです。
法務省のホームページには全体についての詳しい解説が載っていますのでご覧ください。

Question日常生活に関連することってあるの?

改正によって様々な部分への影響があると思われますが、日常生活に関連しそうな部分についてご説明します。

1消滅時効の期間の統一

消滅時効とは、債権者の権利(債権)が一定期間行使されないときに、その権利が消滅することをいいますが、その効果を主張するための期間について、これまでの原則は「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」としており、例外で「職業別の短期消滅時効」や「商取引によって生じた債権は5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」などの規定がありました。

改正後

改正後は債権の種類にかかわらず消滅時効は、①「権利を行使できることを知ったときから5年」または②「権利を行使できるときから10年」のどちらか早い時点の到来で完成するとして一般的な債権の消滅時効の期間について統一されました。なお、損害賠償請求権については下記のとおりの消滅時効の期間となります。
また、法務省のホームページには改正の前後において損害賠償請求権が発生した際にいつの時点の民法の規定が適用されるのかについてまとめてありますので、そちらもご覧ください。

  起算点 時効期間
①債務不履行に基づく損害賠償請求権 権利を行使することができることを知った時から 5年
権利を行使することができる時から 10年
②不法行為に基づく損害賠償請求権 損害及び加害者を知った時から 3年
不法行為の時から 20年
①・②であっても生命・身体の侵害による損害賠償請求 知った時から 5年
権利を行使することができる時から 20年
具体的な場面

友人にお金を貸していますが、貸金の消滅時効はどうなるのですか?

いつの時点でお金を貸したのかによって、消滅時効の期間が異なります。
民法が改正される前(令和2年3月31日まで)に金銭消費貸借契約が成立している場合には旧民法の規定が適用されますので、支払期日の到来など権利を行使できるときから10年で消滅時効が完成します。改正後(令和2年4月1日以降)に金銭消費貸借契約が成立している場合には新民法の規定が適用されます。

給料債権の消滅時効はどうなるのですか?

従前は民法の規定ではなく、特別法である労働基準法において2年とする消滅時効の期間が定められていました。民法の改正に合わせて賃金請求権の消滅時効期間は、原則5年とし、その起算期間は、権利を行使できることを知った時からとする客観的起算点を維持しこれが法律上明記されました。ただし、当面の間は3年間の消滅時効期間とされることとなっており、どの時点で発生し請求することができる賃金請求権であるかによって消滅時効の期間が異なるので注意が必要です。

2保証人の保護のための改正

保証人とは、債権者に対して直接に債務(義務)を負う債務者とは別の立場ですが、債務者の義務の履行を確実にするため自ら責任を負うものです。ところが、保証契約の当初からは予想できない額の支払いを求められる事例が多くみられるようになり、今回の改正で保証人の保護を図る規定などが加えられました。

1. 根保証契約に関する規定

保証人となる契約のうち、債権者と債務者との「一定の範囲の取引」によって生じる債務を保証するものが「根保証契約」です。根保証契約の内容には、「責任を負う金銭の額の上限」である「極度額の定め」がありますが、これを定めない「包括根保証契約」も有効とされていました。
平成17年に入ってようやく、「個人が根保証人となる」場合であって、「貸金等を範囲に含む取引を保証する契約」については「極度額の定め」が必須とされたものの、それ以外の根保証契約は極度額の定めが無くても有効なものとされていました。
具体的には、建物の賃貸借契約の際に「契約継続中の一切の債務」などを保証する保証契約が「極度額の定めのない根保証契約」となる事が多いと思われます。
今回の改正では、「個人が根保証人となる全ての根保証契約」には「極度額の定め」が必要となり、これを欠くものは無効な根保証契約となりました。

2. 連帯保証人に対する請求の効力

今回の改正で、債権者から連帯債務者の一人に対する請求の効力を他の連帯債務者に及ぼさないとする相対的なものへと変更されました。それを受けて連帯保証に関する規定も改正されることになりました。
具体的には、債権者が債務者に対する履行の請求を行わず、連帯保証人のみに履行の請求を行ったとしても、主債務について消滅時効の更新の効果は生じない事になりました。
なお、改正前に成立した保証契約にあっては、連帯保証人に対する履行の請求は主債務者に対しても効力を生じるとする従前の民法の規定が適用されます。
また、特約で請求の効力を旧法と同様にすることが可能ですので、保証人となるときには契約内容を確認することが重要です。

3. 保証人への情報開示

主債務者の債務の履行状況について、保証人から債権者に対して主債務者の債務の支払状況や残額などの情報の提供を求めることができる規定が設けられました。従来は、保証人が主債務者の債務の支払状況や残額の情報を知りたくても、保証人は主債務についての情報を債権者から得ることができませんでした。
結果として、延滞などを知ることができず、延滞額が多額になってから一括で支払いの請求を求められるなど保証人にとって酷な事態がありました。
このような事態を防ぐため、保証人が「主債務者の委託を受けて」保証契約を結んだ場合には、保証人から債権者に対して主債務者の債務の支払状況や残額の情報の提供を求める事ができるようになりました。
なお、この情報開示に関する規定は、委託を受けた保証人に認められる権利ですので、金銭消費貸借契約だけではなく賃貸借契約の保証人についても認められるものです。

具体的な場面

私は賃貸借契約の保証人ですが、保証契約には極度額の定めはありません。今後、賃貸借契約の更新がされた場合、私の保証契約に影響はあるのでしょうか?

判例でも、期間の定めのある建物の賃貸借において、保証契約は、反対の趣旨をうかがわせる特段の事情のない限り、更新後の賃貸借から生ずる債務についても保証の責めを負う趣旨で合意がされたものとされており、賃貸借契約が更新されたことだけでは新たな保証契約が成立したとはいえず、更新後も保証契約は従前の内容のまま継続すると考えられます。
なお、更新の際に合意によって保証契約を締結した場合にあっては、改正後の規定が適用されるため、極度額の定めのある保証契約でなければなりません。

私は保証人になって欲しいと言われ保証人になりましたが、最近債務者との連絡が途切れがちです。債務者が返済をしているかどうかなど知りたいのですがどうしたらよいですか?

債務者の依頼によって保証人となった場合には、債務者から委託を受けた保証人ということになります。
委託を受けた保証人は、債権者に対して、主債務の元本、利息及び違約金等に関してそれらの不履行の有無や残額、残額のうち弁済期が到来しているものの額の情報を求める事ができます。

3賃貸借に関する改正

賃貸借に関する規定の主な改正点は、敷金や原状回復義務などについて判例などで確立していた解釈を明文化したものです。また、従来は借りている建物に修繕が必要な場合であっても、賃借物である建物は賃貸人の物であり、その修繕も賃貸人の義務と考えられていたことから、賃貸人が修繕をしない場合には賃借人が独自に修繕をすることができるかどうか不明確でしたが、改正により明確になりました。
改正後の賃貸借の規定には、①「賃借人が賃貸人に修理が必要である旨を通知し」、または、「賃貸人がその必要を知った」にもかかわらず、相当の期間内に賃貸人が必要な修繕をしないとき、②「急迫の事情があるとき」の場合には賃借人自身が修繕をすることが可能になりました。

具体的な場面

先日の台風で賃貸マンションの窓ガラスが割れてしまいました。私が修理をする場合には何か問題はあるのでしょうか?

賃借人が自身で修繕を行う事ができる場合は、賃貸人が修繕をしなければならない事を知っているにもかかわらず、相当な期間内に修繕をしない時とされていますので、すぐに自身の手で修理はできないと考えられますが、防災や防犯上の観点からすぐに修理が必要となる場合はこの限りではありません。
また、賃借人による修繕が認められる場合にはこの場合の修繕費は必要費として賃貸人の負担になります。
とはいえ、賃貸借契約に修繕についてどのような特約があるのかにもよりますし、特約が無い場合であっても、一次的には修繕の義務は賃貸人になりますので、修繕が必要な場合には賃貸人にその旨を伝えて修理を促す方が良いでしょう。

リンク

民法(債権法)改正について、さらに詳しく知りたい方は、下記リンクからも情報をご確認いただけます。

愛知県司法書士会からのお知らせ

当会では、民法(債権法)改正以外にも、民法(相続法)改正関連の記事や情報も公開していますので、是非ご覧ください。